子どもは変わる!ーすさまじい偏食を治す!パート3- [O4 特別支援教育]
2006.7.16 子どもは変わる!ーすさまじい偏食を治す!パート3-
1年前のブログ記事「2005.7.6(水)すさまじい偏食を治す」、最近の「2006.6.22すさまじい偏食を治すパート2」の続編である。
まず、これら記事から読まれることをオススメする。
一部だけ抜粋すると……
家では、牛乳を飲んだりパンを食べたり肉を食べたりするのだが、学校では牛乳一口、肉一口すらだめだった。
よく言われる「オカーサンハヤスメ(オムレツ、カレーライス、サンドイッチ、ハンバーグ、焼きそば、スパゲティ、目玉焼き)」という軟食文化の食事から「マゴワヤサシイ」(豆、ゴマ、ワカメ、野菜、魚、シイタケ、イモ)という日本の伝統食へ変えるというレベルではなく、まず何か食べさせるというものだった。
これまで、家でも幼稚園でも、野菜はもちろん、ご飯(お米)は全く食べなかったそうだ。ご飯は、幼稚園の年中の頃から突然食べるのを拒否するようになり、もう2年以上口にしていないとのことである。(幼稚園時、尿検査で良くない結果が出て、お医者さんに食事の内容を聞かれ、野菜はさておいてもご飯だけでも摂らせなさいと言われたそうだ。でも、ご飯を盛るとそれを投げつけて抵抗するなど、いろいろやってみたがだめだったそうである。)
みそ汁もほとんど飲まない。パンや牛乳の他には、お菓子や果物を食べていた(る)そうだ。幼稚園では、食パンを特別に持たせていたそうだ。……
(中略 ファーザー)
……7月4日(月)。お母さんの話では、4月以来初めて「学校に行きたくない。」と言っていたという。
A「さあ、約束だよ。」と言って、ホワイトボードのチャレンジの欄に「ごはん」と書いた。もちろん、ミロ入り牛乳も果物も他のおかずも、ごはんを一粒(一口でない)食べた後である。
案の定「できない。できない。」と言って、なかなか食べようとしない。
でも、なんとか米一粒を4分の1ずつに分けて、約2年ぶりに意識してお米を食べた。みんな拍手した。「がんばったね。」と。
結局お米を3粒ほど食べることができた。……(1年前のブログ記事「2005.7.6(水)すさまじい偏食を治す」より引用)
そして、最後の方にこう書いていた。
「おそらくお米は3粒が9粒になったように、やがて一口、二口、お椀の4分の1と増えていくだろう。 思えば長い道のりだった。お母さんもよく頑張ったと思う。」と。
野菜はどんどん食べるようにできたのだが、このお米については、この段階ではまだまだ序の口であった。
この後約1年間、ほぼ平均して10粒前後がずっと続くのである。
何せ、一粒を3回、2回に分けて、1分以上かけて食べるのだ。10粒で10分である。それに、お米ばかりでなく、野菜も食べるように指導しないといけない。しかも、給食時間は限られているのだ。
お母さんばかりでなく、私も途中で何回かくじけそうになった。5粒、10粒では、栄養的には、ほとんど影響は0である。いい加減止めようかと……。(当市では地産地消の方針もあって、毎日米飯である。パンは月に1回である。)
しかし、日本社会(それも米どころのN県)で、お米が食べられないというのは、大変なハンデだ。お母さんも言われていたが、レストランに行っても、食べるものがほとんどないのである。それに保存料がいっぱい入っている食パンを食べ続けるのも心配だ。
この子の一生がかかっている!
そう思い直して、くじけそうになるのを自ら励ましていた。そして、お母さんにも「とにかく続けましょう。」と言っていた。
そうこうしているうちに、この4月には、当然だが進級した。
お母さんは、3月までは週2回給食時に来校され、一緒に昼食を取られていたが、この4月からは来校していない。私もその子も、ランチルームで全校一緒に食べている。
さて、進級しても、あいかわらずだった。ただ、意識して10粒から30粒ほどは、食べるように指導していた。
私(Aさんの手に、40粒から50粒ぐらいの米をおく。)「まず、ご飯からね。」
A「こんなにいっぱい食べられない。」
私「これくらい簡単だ! 先生を見てごらん。それよりずっとたくさんだけど、1回でぱくっと食べられるよ。」(こう言ってやってみせる。)
A[こんなに食べられない。」
私「Bさんだって、ほらCさんだって、1回であんなにたくさん食べてるじゃない。」
A……。
こう言いながら、後半に10粒から20粒ほど減らしてあげ、ここ1カ月ほど結局30粒前後を食べさせるようにしてきた。
そうした中で、この6月19日(月)の朝。お母さんがAさんと一緒に学校に来られた折のことである。
お母さん「先生、この土日に試しにのり巻きにしてみたら、のり巻き5つほど食べました。のり巻きといっても、10粒ちょっとくらいしか一つに入れていませんが……。」
私「そうですか! お母さん、やりましたね! この日をずっと待っていたんですよね!」
お母さん「はい。」(こう言いつつ、声が詰まっている。)
私「さっそく学校でものり巻き作戦をやりましょう。学校にのりを持たせてください。一気にやってしまいましょう。」
お母さん「学校に(他の子が持ってきていないのに)持ってきていいものでしょうか。」
私「Aさんにとって、それはとっても大事な指導内容なのだからいいです。他のみんなには、私がうまく言っておきます。」
10粒×5=50粒。これは、Aさんにとって凄い量である。その日の放課後の会議で事情を話し、のり巻きの件は了解済みとなり、さっそく翌日からのり巻き作戦が始まった。
(最近の「2006.6.22すさまじい偏食を治すパート2」より引用)
この結果、1回に300粒ほど食べられるようになった。そして、最後の方にこう書いていた。
「7月4日からほぼ1年。ようやく家庭と学校で連携したお米の偏食指導がこうして実を結んだ。(野菜については既に実を結んでいる。)ここからは、一気に進むような気がしている。」
本当に一気に進んでいる。
・「7/2(日)夕食カレーライスで、お皿にごはん、カレーを入れて食べることができました。学校ほどの量ではないですが、のり巻分のごはんにカレーをかけました。皆にほめられうれしそうでした。本当に良かったです。」
・「7/9(日)お昼、外食で、とんかつ、キャベツをたくさん食べました。みそ汁も飲み、おどろいた事に、ごはん、のりに巻かずに食べることができました。ごはんは、みそ汁の上ぶたの半分くらいの量です。量は少ないですが、そのまま、はしで食べることができて良かったです。」
学校では、現在のり巻を通常の半分くらいのごはんを巻き、それを8個分食べている。おわん約半分の量である。(その後、食パンに野菜を挟んで食べている。)
1年前に、願ったことようやく叶っている。保護者と共に喜ぶと同時に、子どもは変わるものだ! とつくづく思う。
もし子どもの抵抗であきらめていたら、おそらく一生食パンの生活である。実際そういう大人がいることも聞いている。同じような理屈で、ほんの限られた野菜やメニューしか食べられない大人になったと思う。食べたものから人間は作られるのだから、その結果として、健康な身体を手に入れることは難しかっただろう。性格的にも、バランスの取れた栄養が摂取できていないせいで、落ち着きのない行動が多々見られることになったろう。
子どもの抵抗に屈することなく、やり通したお母さんと私。頑張り通してよかった。もう子どもは、偏食から脱することができた(る)! 一番抵抗の大きかったお米がクリアーできたのだ。既に野菜もかなり食べられるようになっているが、少々の抵抗があったとしても、簡単なものだ。
蛇足ながら、次女クニコ4歳も偏食が結構ある。みんなが食べ終わっても、一人食卓に残って野菜やみそ汁を飲んでいることが多い。みんなが食べ終わってから30分ほどそうしていることはざらにある。昨日も、「みそ汁を飲むまでは(食卓から降りては)ダメだ!」と言って、結局飲ませた。これぐらいかわいいものだ。
なぜ、頑張り通せたか。それは、食事の重要性を認識していたからである。そして、その認識をもとに、やり通すと堅く決意していたからである。家庭と学校がそういう認識と堅い決意を共有し、連携したからである。
もちろん、「好きなデザートはあと」、「好きな食パンに挟んで」、「学級園で収穫した野菜を使う」、「おいしそうに目の前で食べてみせる」、「○○を食べると、△△にいいんだよ。」と話す……など片々の工夫はある。
が、根本は「食事は重要だ」という認識(価値観)と、子どものためにやり抜くという決意である。
NHKスペシャル「好きなものだけ食べたい」を見る限り、現代の食卓は恐ろしく乱れている。これでは、いろいろな犯罪が起きるわけである。(食事と犯罪はすごく関連がある。)
もう一度、食事の重要性を認識するために、読みやすい1冊の本を紹介しておく。
『親子で学ぶ 頭のよくなる栄養事典』(杏林予防医学研究所長 山田豊文、国土社700円)
なお、毛髪分析は、この杏林予防医学研究所で行っている。
また、食事と関連のあるブログ記事を以下にまとめておく。
・「NHKスペシャル『好きなものだけ食べたい』に見る現代の食卓とその影響」
・「2006.7.2身近な生活用品や食品の安全VS危険どっちを選びますか?」
※ 学期末は忙しい。それ以上に、実母の健康診断の結果が思わしくなく、それで落ち着かず、ブログを書くことをお休みしていました。今後も、しばらくなかなか書けないかもしれません。
7/18 今日初めて学校でラーメンを食べた。1年以上一口も食べなかったのに。お汁も具もかなり食べた。6割ぐらいであろうか。本当に一気によくなってきている。
偏食の記事を読みました。
考えさせられました。米をたべない、2年も!
あきらめないで、先生やご両親はがんばったなあ、と思いました。
子どもは今1歳で、なかなか食べるのが苦手なタイプの子どもです。
離乳のときから野菜、肉を嫌ってます。
細かく刻んだりすったり、という方法で、何とか食べさせているような状況です。これからどうやって食べさせていくか、また食べないことの成長に対する影響は、といろいろ考えさせられました。
by (2006-07-16 22:38)
>ちばおハムさんへ
小さいうちこそ大切だし(栄養素の影響が大きい)、味覚が固まっていないし、親の全面的な保護下にあるので、身に付けやすいと思います。
本来体が要求する物は、おいしく感じるはずなのですが、実際は抵抗に遭うことも多いですよね。次女ばかりでなく、長女も結構そうでした。
でも、長女は現在は何でも食べます。野菜を食べることは大切だと分かっていますし、甘い物を取りすぎるのもよくないと分かっています。
基本的には、ねばり強く必要な栄養をとるように働き続けることしかないと思います。がんばってくださいね。
by 泉河潤一 (2006-07-17 12:31)
まわりの大人の努力って大事ですね。
食事に限らず、よい習慣というのは根気がいりますし。
食べることは、自分らしく生きていくためのベース。
しっかり、その大事さを伝えていきたいと思います。
3連休がついに終わりましたね。
まだまだお忙しいことと思います。
お母様のお体心配ですね。
お大事になさってくださいね。
by miyu (2006-07-17 21:58)
先生と親子の壮絶なご努力に、心底驚きました。
何でも好き嫌いなくパクパク食べるうちの娘は、
それだけでもありがたいと思わなくちゃいけないですね。
お母様、お大事になさってくださいね。
毎回ブログ記事の内容がとても濃いので
ファーザーさまも忙しいときは、あまりご無理なさいませんように。
by monami-k (2006-07-18 16:50)
先生とお母さんの努力がみをむすびましたね!!
すごいな・・・感動です。
うちも息子がやはり偏食ですが、保育園に入り
野菜を育てたり、ご飯を手伝ったりすると
自分でつくったものの喜びでたべれるようになったものも
出てきました。
でも私は小学校時代嫌いだった「ひじき」を残しいつも掃除になっても
たべさせられたといういやな思い出があり、今でもあまりすきではない
ので・・・できれば楽しく食べれるようになるきっかけが
ないかな~なんて思ってます。楽観的でしょうか??
by ともれいっち (2006-07-18 19:15)
・・すごいですね。考えさせられました。
ピーマンやにんじんが食べられない。とか言う
次元ではなく、お米が食べられないとなると、
「食べなくていいよー」なんて言ってられませんよね!
他に「お米」に変わるものなんて・・ないですしねえ。
(日本に住んでいて)
ほんとに、お母さんをはじめ、まわりの皆さんの努力
の結晶ですね。簡単には真似できないことです。
・・とすると、本気になってあきらめなければ、改善
できるという証拠ですよね、偏食って。ただ、親が
あきらめてしまうと言う現実が・・(反省)
考えさせられました、本当に。ブログの更新、あまり
無理をされませんよう・・次回も楽しみにしています!
by harurin (2006-07-20 17:14)
>miyuさんへ
コメントありがとうございます。
そうなんです、「食べることは、自分らしく生きていくためのベース」なんですよね。その辺りの大切さがもっと広く伝わっていけばいいなと思います。
習慣化というのもキーワードですよね。身に付くまでは大変でも、習慣化すれば、難なくやってしまえますから。
by 泉河潤一 (2006-07-22 15:17)
>monamiさんへ
コメントありがとうございました。
心にしみました。
「壮絶なご努力」とは、いわれてみればそう表現することがふさわしいかもしれません。
おそらくは、かなりのご家庭で偏食の指導にお困りではないかと思い、アップしました。参考になるとよいのですが……。
by 泉河潤一 (2006-07-22 15:20)
>ともれいっちさんへ
コメントありがとうございます。
小学校の頃パセリが食べられないでいたら、母が「これを食べると眼がきれいになるんだよ。」といって、ぱりぱりとパセリを食べて見せてくれました。それを見た私は、「眼がきれいになるのか。」と率直に信じて、パセリを食べたのでした。(あまりおいしくなかったけど)
あの手この手で、いろいろ試してみるといいと思います。
by 泉河潤一 (2006-07-25 12:13)
>葉瑠ママさんへ
「本気になってあきらめなければ、改善できるという証拠」とは、その通りだと思います。それを伝えたくて、ブログのアップしたんですね。
コメントありがとうございました。
by 泉河潤一 (2006-07-25 12:16)