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離任式でのあいさつ 第797号 [L 仕事]

◆リード:6年間在籍した現勤務校から新しい学校へ転勤することになった。離任式でのあいさつをどうしたものか。

2010.3.28 離任式でのあいさつ 第797号

 6年間勤務した現任校から近隣の学校へ転勤することになった。
 いつもは、3,4名は転勤するのに、今年は私一人。長くても1分以内のあいさつを考えていた私だが、今回に限っては5分のあいさつをすることにした。全校児童がわざわざ私一人のために登校し、決まり切った1分足らずのあいさつを聞いて下校というのでは、申し訳なく思ったからだ。事前に5分間にあいさつについて、校長先生からも承諾をとった。

 結局、次の文章を考えた。

 
【離任式のあいさつ】文章中の名前は仮名です。

 おはようございます! ファーザー先生です。

 昨日整理していて、6年生の太郎さん(仮名。特別支援学級在籍)が4年生の時の日記を見つけました。次の文章です。(実物の日記帳を手にとって読む)

■11月25日(火)今日は、朝から雨がふっていたので、あまり気分がよくありませんでした。すごく、雨がふっていて、晴れてくれませんでした。今もずっと雨がふってます。野菜や、花は、よろこんでいます。今度はぼくがよろこぶ天気になってほしいです。

 太郎さんは、入学時にはひらがなを書くことができませんでした。入学後、ひらがなを覚え、カタカナ、漢字、ローマ字も覚えました。そして、1年生の時からほとんど毎日ずっと日記を書いてきました。だから、今では日記をもっと上手に書けるようになっています。

 私は、このA小学校で、「どの子にも可能性があり、とりわけ、得意なこと、好きなこと、伸びるところ、長所があること。そして、そこを努力して練習して伸ばすことで、すごい可能性が広がっていくこと」を学んだように思います。

 A小学校では、好きなこと、得意なことを練習して伸ばした子はたくさんいました。本当には、全員について紹介したいのですが、何名かにしぼって紹介します。

■例えば、6年生のイチローさん(通常学級在籍。仮名)。体育のバスケットボールの試合の様子を見ていると、ドリブルも、シュートも、パスもずば抜けてうまい。イチローさんにとって、バスケットボールは、好きで得意なこと、長所だと思います。聞けば、小2からクラブに入って練習していたそうです。きっと初めはだた好きでおもしろいぐらいだったのでしょうが、そこを努力して、練習して伸ばすことで可能性が広がったのだと思います。

■同じく6年生の二郎さん(特別支援学級在籍。仮名)は、料理が好きで上手です。サツマイモのレモン煮やりんごアメ作りなど、いつも教師の私よりもうまくできました。この時間だけは、先生と子どもが逆になっていました。聞けば料理が好きで、おばあちゃんと一緒に料理を作ることがよくあるとのことでした。

■5年生のマサシさん、ミクさん(通常学級在籍。仮名)は、大勢の前で発表することが得意です。卒業式の司会は堂々としていてすばらしかった。菜々子さんは、3年生のときの劇「どろぼう学校」でも、堂々として台詞を言えていたし、とういさんは、運動会のときの放送でも、堂々とアナウンスしていました。二人もやっぱり、得意なことを練習して伸ばしたのです。

■5年生の三郎さん(特別支援学級在籍。仮名)の場合は、工作が好きで得意でした。ブロックでいろいろな生き物など上手に作りました。好きだから何個も何個も作るうちに、ますます上手になっていきました。4年生の時の理科で「電気自動車」を作ったことがありました。そのとき、設計図を見ながら作り方を読み取り、さっと作ることができました。そして、うまく作れないでいる他の4年生(通常学級の子ども達)に作り方を教えて回っていました。

■4年生のユーミンさん(通常学級在籍。仮名)は、縄跳びが得意です。二重跳びはもちろん、綾二重跳びもできていました。ユーミンさんも、はじめから二重跳びやあや二重跳びができたわけではないはずです。やっぱり好きで得意なことを練習して伸ばしたのです。

■おなじく4年生の四郎さん(特別支援学級在籍。仮名)は、野菜の苗植えや虫取り、魚取りが好きで得意です。サツマイモやジャガイモの苗植えの時、「こうするといいんだよ。」とやってみせてくれました。その通りにやったら、とてもうまくいきました。
 また、今年度、児童玄関前のこんな狭い川(川幅50cm未満)で、こんな大きなコイ(30cm以上)を二匹も捕まえました。何度も何度も挑戦して、逃げ回るコイをとうとう網で捕まえたのです。

 初めから文字を書ける人も、二重跳びができる人も、練習なしで劇や司会が上手にできる人もいません。繰り返し繰り返し練習があったはずです。ブロックにしても料理にしても魚捕りにしても、好きなことだから、練習・挑戦を続け、得意に上手になったのだと思います。

 A小学校では、そんな可能性を伸ばしていったたくさんの子ども達を見てきました。

 私は、今度、B小学校へ転勤します。新しい学校でも、「この子には無理だ、できないと初めから決めつけないで、たくさんの子ども達の可能性を見つけ、一人一人がそれを伸ばせるように、教えていこう」と思います。

 素晴らしい子ども達、そして先生方、6年間ありがとうございました。

 ほめられた通常学級の子ども達も、ほめられた特別支援学級の子ども達も、にこにこして聞いていたそうだ。
 
 最後に、全校の前で、特別支援学級在籍の子ども達のよさを紹介し、ほめることができてよかった。合わせて、私の教師としての姿勢(信念)も紹介することができた。

 新しい学校でも、特別支援学級担任なのだが、このスピーチの通りの姿勢で教えていこうと思う。

【関連記事】あったかい家族日記  「家族の広場」 

O4 特別支援教育

卒業式 色紙・賞状・感謝の手紙 第796号


◆キーワード:1 子どもへの別れの言葉  2 スピーチ  3 離任式

◆留意点・その他:

・事前に原稿用紙に書いて音読し、5分間のスピーチであることは確認している。

・私が書いた子育て本です。ぜひごらんください。 

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qooo

一人一人に、あたたかい、言葉。
みんなの胸に、きっと響いた事と思います。
保護者として列席していたら、
感動して号泣してしまうかもしれません。
一人一人の子供と向き合って下さる、
ファーザーさんのような先生に、我が子も出会える日が
くるとよいな、なんて、しみじみ感じました。

by qooo (2011-03-29 15:32) 

ファーザー

>qoooさんへ
コメントありがとうございます。

当初この学校に転勤してきた頃は、児童数百名余りだったのですが、現在は百名を切っています。規模の小さい学校で、しかも転勤者が1名だったからできたスピーチです。

自分で言うのも何ですが、プロ意識をもち、体を張って子どもと向き合ってきましたね。

新しい学校は、児童数がこの学校の5倍近くもあります。
新任地でも同じ構えで、子どもの可能性を信じ、それを伸ばしていこうと思っています。
by ファーザー (2011-04-01 20:35) 

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