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算数・数学好きにする難問 第767号 [D1 父と子塾]

◆リード:12月26日(日)は、今年最後の父と子塾であった。論語音読、都道府県かるた、俳句暗唱とあって、ラストに算数の難問を出した。英国エクセター大学のブライアン・ボルト教授が、算数・数学パズルへの興味を引き出し、創造的思考力を育てるべく開発した100の問題から選んだものである…。

2010.12.27 算数・数学好きにする難問 第767号

【算数・数学好きにする難問】

私「これは、イギリスのある大学教授が算数の力を付けるために、特別に作ったとっても難しい問題なんだ。解けるかな?」

 こう言って、ふたりに問題を渡した。

■3 河渡りのくふう
 おおきみとやぎをつれ、キャベツを持って旅をしている人が、川を渡ろうとしました。川には、小舟が1そうしかなく、旅人が乗ると、あと、おおかみ、やぎ、キャベツのどれか1つだけしか乗せられません。
 おおきみとやぎだけにすると、やぎは食べられてしまいます。やぎとキャベツだけにすると、やぎはキャベツを食べてしまいます。
 どのようにしたら、川をうまく渡ることができるでしょう。

(※ 文章と合わせて、キャベツを持った旅人、その右手におおかみ、左手にやぎ、川と1そうの小舟のイラストが描いてある。)

アキコ「(狭くて乗れないなら)おおかみの上にやぎ、その上にキャベツを積んで乗ればいい。」

私「文章をよく読んでごらん。<旅人が乗ると、あと、おおかみ、やぎ、キャベツのどれか1つだけしか乗せられません>と書いてある。」

クニコ「(首にロープをつないだまま)やぎとおおかみは泳がせる。」

私「ああ、必ず小舟に乗せて、渡るんだよ。」

 「キャベツを向こう岸まで投げる」などというアイデアまで飛び出し、その度に「そのやり方はダメ。」と言われ続けたアキコは、難問を楽しむどころかふてくされてきた。

アキコ(難しくて)「解けない!」

こう言って、(もういい。やりたくない!)と表情で訴えるアキコは、それ以上やろうとしない。

私「そんな反応は初めてだな。お父さんが受け持った6年生にずっと出してきたけど、そんなにすぐにあきらめないで、<あーでもない、こーでもない、先生こうすればいいんじゃない…>と挑戦してきたけどな。」

 父と子塾を楽しいものにしようと、難問を出してみたのに、予想外の反応に驚いた私だが、そのまま答えを教えずに、課題を残して終わった。

 その場にいた妻にも、同じ問題を見せたのだが、妻も解けないようだった。


【クニコ4分の1正解する!】

 その夜、クニコといっしょに入浴していると、

クニコ「父と子塾でやったあの問題さ、どうやればいいの。」

私「だから、小舟に乗せて川の向こうへ、キャベツ、おおかみ、やぎを運ぶのさ。」

クニコ「まず、キャベツを運ぶと、その間におおかみがやぎを食べてしまうんだよね。」

私「そうだね。だから、まずいね。」

クニコ「おおかみから運ぶと、その間にやぎがキャベツを食べてしまうよね。」

私「そうだね。まずいね。」

クニコ「だからまず、やぎを運べばいい。」

私「うん、そこまではあってるよ!」

クニコ「その後は、うーん、キャベツを運ぶと、やぎが食べちゃうし。おおかみを運ぶと、やぎを食べちゃうし……。うーん。」

 ここで、クニコは参ってしまった。

 お風呂から上がって、妻とアキコにさっそくクニコの奮闘ぶりを話した。

私「クニコが父と子塾で出した算数の難しい問題を、4分の1解いたぞ!25点だよ!」

 こう言って、クニコがまずやぎから運んだことを紹介し、思い切りほめた。


【翌日の再挑戦!】

 27日夕食後の団らんの時間。
 おもむろに画用紙を取り出し、さらさらとマジックで、川、キャベツ、旅人、おおかみ、やぎを描いた。そして、それぞれをはさみで切り、さらに小舟を作った。

IMG_0798.JPG

私「ほれ、こういうふうに具体物を作ってやってみると、考えやすいんだよ。」

 注目するアキコ、クニコ、そして妻。

私「昨日、クニコが解いたように、はじめにおおかみを乗せると、その間にやぎがキャベツを食べてしまう。キャベツを乗せると、その間におおかみがやぎを食べてしまう。だから、はじめにやぎを乗せないといけないんだね。問題はその次だ。」

 しばらく画用紙で描いた川、キャベツ、旅人、おおかみ、やぎを見つめる3人。

妻「あっ、わかったわ!」

私「黙っててね。自力で解いた喜びを奪いたくないから。」

クニコ「川の向こうには、木があるの?」

私「それは問題を解くのに関係ないことだよ。」

クニコ「じゃあ、あってもいいの。」

私「だから、それは関係ないって。」

 次に、おおかみをやっても、やぎが食べられる。だからといって、キャベツを運んでもやぎに食べられる……うーん。画用紙で作った小舟に色々乗せながら考えていたアキコが突然

アキコ「わかった!お父さん、こうでしょう。」

私「クニコにわからないように、お父さんの部屋で教えて。」

IMG_0797.JPG

 アキコの説明を聞くと、正解であった。

私「よくできたね! 自分で解くと快感だろ。」

アキコ「うん!」

 最後に残ったクニコ。

クニコ「う~ん、解けないとイライラする。まず、やぎを運んで、木にやぎを縛り付けておく。次に、おおかみを運んで、(やぎから離れた)別の木におおかみを縛り付けておく。」

私「ああ、木はないことにして。なくても解けるんだよ。」

 あきらめずに、あーでもない、こーでもないと画用紙グッズを操作しているうちに、

クニコ「わかった!」

IMG_0799.JPG

 画用紙グッズで操作させながら、説明を聞くと、正解であった。

私「おめでとう!できてるよ。感想は?」

クニコ「とっても気持ちいい!」

アキコ「次の問題もやりたい!」

 かくて1日遅れで、私の意図した成果が出た。


【算数好きを育てる難問】

 脳力も、筋力と同じで、汗をかいて鍛えれば鍛えるほどよくなる。
 それには、挑戦しがいのある難問を与えるのが有効な方法の1つである。

 難問は、解けそうでいてなかなか解けないので、<あーでもない。こーでもない。>と色々考えることになる。その過程で、脳みその筋肉が汗をかき、鍛えられるのである。

 あれこれ精一杯考え、解けたときの感動、快感は大きい。アキコの「快感」、クニコの「とっても気持ちいい」という感想にも表れている通りである。

 精一杯考えて自力で解いたという経験は、自信につながっていき、さらに算数好きを育てることになる。それは、アキコの「次の問題もやりたい!」に表れている。

 ポイントは、答えを教えず、あくまで自力で解かせることである。自力で解くと、感動が大きいからである。だから、ヒントもできるだけ与えない方がよい。<それは間違っている>ということがヒントとなるぐらいである。
 もし、ヒントなしで全く解けないなら、そもそもその問題が余りに難しいのである。

 ただし、解き方のヒントは<この場合で言えば、画用紙でグッズを作ってみる>与えてもよいと思う。(ここも、自力で気づいて欲しかったが。)

 算数好きに育てる、脳力を鍛えるなどの効用はさておいても、親子で同じ問題を精一杯考えるひとときも楽しいものだ。親子のふれあいにも、一役買うであろう。

【関連記事】あったかい家族日記  「家族の広場」


◆キーワード:1 算数の難問  2 父と子塾  3 親子のふれあい

◆留意点・その他:

・ちなみに、わが子のリクエストに応じて、続いて出した問題は、次の問題である。アキコ、クニコ、妻の3人はあれこれ考え、実際にマッチ棒を操作しながら、最後には全員が解いた。やっぱり解いた後は、快感だったそうだ。読者のみなさんには、合わせて挑戦してみてください。

■8 3つの正方形

 右の15本のマッチ棒のうち、3本だけ取り去って、3つの正方形が残るようにしてごらんなさい。
 こんどは、15本のマッチ棒のうち、2本だけ取り去って、3つの正方形が残るようにしましょう。
(正方形は3つとも同じ大きさでなくてもよいことにします。)

IMG_0803.JPG

※ 前掲書17ページから引用 

IMG_0800.JPG

・いずれも正解はわざとブログにはアップしません。自力で解いた快感を、読者にも味わって欲しいので。ただ、どうしても正解を知りたい方は、コメントをください。特別に正解を教えます。

・この問題は、『算数・数学科 楽しい活動のための新しい問題』から出したのだが、作者の意図が、「算数・数学に対する興味を育てること」にあったのである。普通の教科書の練習問題では、算数・数学のできる子ども(才能のある子ども)が授業に興味を持てない危険性がでてきたとして、9才から12才の子ども向けに、英国エクセター大学のブライアン・ボルト教授が作成した問題である。

・私は、20年以上も前、20代のとき初めて高学年を担任したときから、この本から子ども達に合いそうな問題を選んで解かせていた。ここに紹介した問題は、その中でも熱中していた問題である。

・12月26日(日)は、今年最後の父と子塾(第二期85回目)であった。
 午前10時から始めて、1時間10分行った。
 いつものように、
①あいさつ、
②「幸せになる五つの約束」音読、
③1週間のグッド&ニュー、
④1週間のめあてのふり返りと発表、
⑤読んだ本・読む予定の本の紹介、
と進んだ。

 ⑥「学習」では、論語音読、都道府県かるた、俳句暗唱とあって、ラストにこの算数の難問を出した。


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qooo

頭の体操になりました〜。
自分で解けたときの感動って、ありますよね。
父と子塾、とても素敵ですね。

2010年も大変お世話になりました。
ファーザーさんのお子様やご家族への接し方は
勉強になる事ばかりです。
いつも、参考にしており、可能な限り実践してます。
来年もどうぞ、宜しくお願い致します。
by qooo (2010-12-31 06:36) 

ファーザー

>qoooさんへ
父と子塾ですが、マンネリ化し、内容が子ども達にとって魅力的ではなくなってしまっていたようです。そこで、改革したところです。本文の算数の難問も、そうした改革の1つです。

こちらこそ、qoooさんのコメントやnice!には、大いに励まされました。
qoooさんのブログのセンスと言いますか、空気は好きで、コメントこそあまりしないものの、いつも楽しみにしています。

お互いによい1年になりますように。
by ファーザー (2011-01-02 13:53) 

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