仲間外しだって訳がある! 第763号ーすべての行動には肯定的意図があるー [H3 いじめ]
◆リード:朝、教室に行ったら、AさんがBさんに「ウソついたな!」と言いながら、プロレス技をかけていた。Aさんによれば、「今日は誰とも遊ばない。」とBさんは言っていたのに、BさんはCさんとDさんと遊んでいたという。そして……。
2010.11.12 仲間外しだって訳がある! 第763号
ーすべての行動には肯定的意図があるー
私は特別支援学級を担任している。担任しているAさんが特別支援教室にいないので、交流学級に行ったら、普段は仲良しのBさん(同学年)に「ウソついたな!」と言いながら、プロレス技をかけていた。
私「どうしたの?}
Aさん「Bがウソついたんだ!」
私「ウソって?」
Aさん「『今日は誰とも遊ばない。』と言ってたのに、CとDと遊んでたんだ。」
Bさん「たまたまセブンイレブンに行ったら、CとDがいて、遊ぶことになったんだ。」
Aさん「ウソだ!ランチタイムに、Cとこそこそ話してたから、そのときに約束してたんだ。」
私「わかった。わかった。Aさんは、誰とも遊ばないと言っていたのに、自分ばかりのけものにして遊んでいたのが嫌だったんだね。そりゃ、嫌だよな。」
こう言われて、Aさんは自分の気持ちをわかってくれたと思ったらしく、Bさんを締める力が弱くなった。
そして、Bさんの担任(通常学級)と二人がかりで、AさんとBさんを離した。
私「誰とも遊ばないと言って遊んだのは事実だろうけど、たまたまセブンイレブンで会ってそうなったか、わざとかは、よく聞いてみないとわからないろ。」
Aさん「いや、絶対にわざとだ! 後で、Cにもプロレス技をかけてやる!」
興奮気味のAさんと、Bさんを離した後、Aさんを私が、Bさんを担任がそれぞれ個別に話を聞いた。
Aさん「おい、C。たまたまセブンイレブンで会ったのは、ウソだろう。ランチタイムに相談してたんだろう!」
こう何度も問い詰められたCさんは、はじめのうちは笑って返答しなかったが、とうとう
Cさん「Bが、『A嫌らっけ、誘わないにしよう。』と言ってきたんだ。」
と白状した。
Aさん「やっぱり(わざと誘わなかったんだ。Bが悪いんだ。)! Cには、プロレス技はかけない。」
一方、BさんとBさんの担任の話では、Aさんがこの間遊びに来たとき
Bさん「『オレにもPSPをさせてくれ。』と何度言ってもやらせてくれなかったから、いっしょに遊びたくなくなった。」
そうだ。つまり、BさんにもBさんの理由があったのだ。
この段階で、二人を引き合わせて、話し合わせた。
私「Aさん、BさんにはBさんの理由があったみたいだよ。」
Bさん「お前、この間家に遊びに来たとき、『オレにもPSPをさせてくれ。』と何度言ってもやらせてくれなかったじゃないか。(だから嫌なんだ。)」
Aさん「そんなことない。1回やらせたじゃないか。」
Bさん「たった1回じゃないか。何回も何回も言ったのに、なかなかやらせてくれなかった。」
Aさん「お前がやると、すぐに死ぬ(ゲームオーバー)から。」
Bさん「だから、あの□△ソフトなんかもうやりたくない!つまらない!」
Aさん(考え込む。)
Bさんの担任「Bさんはね、あの□△ソフトはやりたくないみたいよ。Aさんが来ると、そればっかりだから、誘いたくなかったみたいだよ。」
Bさん「そうだ!お前が来ると、そればっかりしようとするから嫌なんだ!」
Aさん(考え込む。)
私「最初はAさんばかりぬけものにしたBさんがよくないと思っていたけど、Aさんにも原因があったんだね。自分ばかりゲームをやるんじゃなくて順番にするとか、相手も喜ぶゲームをしないといけないよね。」
かくて一件落着。お互いに言いたいことを言いあった二人は、ようやく落ち着いた。
【すべての行動は肯定的意図がある】
「すべての行動には、肯定的意図がある」
この事例で言えば、AさんがBさんにプロレス技をかけた肯定的意図は、
「仲間外しにしないでほしい」
ということである。
BさんがAさんにウソをついてまで仲間外しをした肯定的意図は、
「PSPを独り占めしないで、自分もさせてほしい。自分ばかり楽しい遊びをしないで、ボクも楽しめる遊びをしてほしい」
ということである。
万引きすらも、親の愛情不足から起きるという。つまりは、万引きの肯定的意図は、「親の注意を自分に引きつけること」である。
子供も問題行動を見ていくとき、表面に現れた行動ー暴力をふるう、ウソをつく、仲間外しをする…ーにとらわれて、そこだけ否定するー暴力はダメ、ウソはダメ、仲間外しはダメ…ーような、表面的に対応に終始してしまいがちである。
しかし、「すべての行動には、肯定的意図がある」という前提で子供の問題行動を見ていくとき、表面的でない、一段深い対応が可能である。
それこそが、根本的な解決につながっていくと考えている。
今回の事例で、ウソをついて仲間外しをしたBさんだけを否定しても、Aさんがゲームを独り占めするという問題行動に気づかない限り、根本的な解決にはつながらない。
今回は、Aさんにも気づきを促したようで、Aさんにとってもプラスとなったろう。
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◆キーワード::1 いじめ 2 けんかの仲裁 3 肯定的意図
・ここで適切に対応しなかったら、この仲間外しをきっかけに、いじめに発展する可能性もあった。Aさんがすぐに行動するタイプであったので、発見しやすかったこともあるが、初期対応が大切だ。朝発見し、朝のうちに対応した。
読んでいて考えさせられました。
子供には子供也の、理由があるんですよね。
丁寧にもつれている事柄を、ほどいてみると、
事実が見えてくるんですね。
なるほどな〜と、感慨深いです。
by qooo (2010-11-20 11:04)
なるほど!
「すべての行動には、肯定的意図がある」という見方、目からウロコです。
子供がいじわるしたり、ウソをついたり、仲間はずれにしたり、果ては万引きも、自分をもっと大切にしてほしいっていう気持ちの表れかもしれませんね。
さて、『子育てハッピーアドバイス』シリーズをご愛読いただき、ありがとうございますっ(*・∀・)人(・◇<*)
このたび、シリーズのイラストでおなじみ、太田知子さんの育児ブログが単行本になりました!! タイトルは……『子育てハッピーたいむ 1 ななとひよこの楽しい毎日』です。
『子育てハッピーアドバイス 大好き!が伝わる ほめ方・叱り方』の中から、大切な言葉を選んだ、31日分の日めくりカレンダーも、大好評発売中
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「ハッピー仲間」ブログで紹介していますので、ぜひ遊びにきてくださいね
http://ameblo.jp/10000nen/entry-10707905333.html☆⌒Y⌒ヽ(o-∀-)ノ
by ぴこママ (2010-11-25 15:42)
>qoooさんへ
コメントありがとうございます。
「すべての行動には、肯定的意図がある」
というのは、実は私が学んできたNLPの基本前提の一つなんです。
私は、子供(大人も)がするいろいろな問題行動を見ていく際の、基本前提にしています。そうしたスタンスから子供の問題行動を見ていくと、根本的な解決につながっていくように思います。
by ファーザー (2010-11-27 10:30)
>ぴこママ さんへ
コメント&ご紹介ありがとうございます。
太田知子さんの育児ブログを訪問してきました。
可愛いイラストで、日々の細々とした出来事を楽しい雰囲気で描いていますね。太田さんらしさがうまく表現されており、かつ可愛いイラストが描けるというのは、うらやましいなと思いました。
by ファーザー (2010-11-27 11:07)