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★指導員(介助員)さんの仕事 第655号ー登山のガイドにたとえて説明ー [O4 特別支援教育]

◆リード:反抗挑戦性障害のAさんの指導が大変だということで、10月14日から特別に指導員さんが当校に配属された。そして、2週間が経過。特別支援教育コーディネーターでもある私は、指導員(介助員)さんの仕事(内容・心構えetc.)について説明した。

2009.10.26 指導員(介助員)さんの仕事 第655号

ー登山のガイドにたとえて説明ー

 反抗挑戦性障害のAさん(通常学級に在籍)の指導が大変だということで、10月14日から特別に指導員Bさんが当校に配属された。
 Bさんは、これまで教育関係の仕事をしたことがない、30代の既婚女性(子供はまだ)である。配属当初には、Aさんの実態や、Aさんとのかかわり方などを中心に、仕事内容を話していた。

 3週間が経過し、指導員(介助員)さんの仕事のアウトラインを、特別支援教育コーディネーターでもある私の方で説明することにした。
 これまで教育関係の仕事をしたことがないBさんに、どのように説明したら、分かりやすいか?!
 私は、9月に行った全校登山になぞらえて、指導員(介助員)さんの仕事のアウトラインを説明した。時間は、30分間である。


【指導員の基本的役割と心構え】

 Bさんを前にして私は、リュックを背負ったAさんのイラストと、その斜め後ろにB指導員さんのイラストを描き、その前方にこれから登る山を画用紙に描いた。

私「指導員さんの仕事は、山登りのガイドとしての役割なんです。母親としてAさんの側にいて一緒に山登りをするというイメージですね。」

私「山は学習課題のことで、山頂に着くというのは、学習課題を達成するということのたとえなんです。そこで、一番大切なことは、Aさんは登れるだけの力ー能力や意欲ーをもっていると、心から信じることなんです。私がサポートしながら登ることで、Aさんは必ず山頂まで行けると、信じることなんです。」


【登山のしおり1「●ねらい」】

私「あらゆる学習活動には、ねらいがあります。

 遠足でも、登山でも「しおり」があります。その最初に書いてあることが、●ねらいです。登山でいえば、①最後までがんばり通す体力と気力を育む とか ②励まし合って登る とか ③自然に触れ親しむ などがありました。

 指導員として、あらかじめ「しおり」を読んだり、教師に聞いたりして、山頂すなわちねらいを知っておく必要があります。どこまでいけば、ねらいを達成したことになるのか、知っておく必要があるのです。」


【登山のしおり2「●行程・地図」」】

私「「しおり」には、●行程や地図がのっています。どんな道順で山頂まで行くのか。いつまでに山頂に着くのかなど、これらも大切な情報です。

 この辺りは、ガケがあって危険だとか、分かれ道・迷いやすい所はどこか、見晴らしがよい見所はどこか、途中で休憩できそうな所はどこかなど、子供ばかりでなく指導員さんも、もちろん事前によく頭に入れておく必要があります。」


【登山のしおり3「●持ち物の用意」】

私「「しおり」には、必ず●持ち物がのっています。水筒、敷物、お弁当…などですね。これに当たるのが、筆記用具であり、教科書やノート、ドリル…ですね。

 Aさんの場合、朝ランドセルが出っぱなしになっていたり、教科書やドリルがなかなか用意できなかったり、よくしますね。
 低学年なら、リュックに水筒・敷物・お弁当などを詰めることを、親がやってあげたり、親が子供と一緒にやってあげたりします。それと同じく、Aさんの場合も、自分で用意できなければ、やってあげ、あるいはい一緒にやってあげ、徐々に一人でできるようにしていくわけです。」


【登山のしおり4「●ルールを守る」】

私「「しおり」には、必ず●ルールがのっています。たとえば、①安全についてのルール「石や木など、危ないから投げない」。 ②おやつは、休憩中に食べる。 ③励まし合って登る。あいさつをきちんとする…などですね。
 これに当たるのが、Aさんと約束したルール「悪口、大声、授業のじゃま 注意しても聞けない場合は、教室の外へ出てクールダウン。授業中、他の教室に入りません。……」です。
 これらは、しっかりと頭に入れて指導に当たる必要があります。そして、守らせる必要があります。


【登山中の役割1「安全への配慮」】

私「さて、実際に登山(学習)が始まりました。登山道では、ガケのある危険な所もあります。しおりで確認済みですが、実地でも当然声をかけたり、手を引いたりして注意を喚起し、危険を回避できるように促します。

 また、石を投げるような危険行為をした場合、「下から登ってくる人に当たるとケガをします。危ないから止めなさい。」と注意しますね。それでも、言うことを聞かない場合、手をつかみ、石を取り上げるでしょう。つまり、言葉で注意しても聞けない場合は、身体的に止めさせることもするでしょう。
 それと同じように、Aさんが友達に暴力を振るったりした場合、言葉で注意しても聞けない場合は、身体的に止めさせなければいけないのです。」


【登山中の役割2「ルールを守らせる」】

私「①安全についてのルール「石や木など、危ないから投げない」というルール以外にも、②おやつは、休憩中に食べる。 ③励まし合って登る。あいさつをきちんとする などのルールがあります。

 Aさんの場合、まだ食べてはいけない時間なのにおやつを食べたり、あいさつがきちんとできなかったり、遅れがちな友達にひどい言葉をかけたりする場合もあります。

 その都度、「もうすぐ休憩できる場所だから、それまで待とうね。」と声をかけたり、あいさつする姿を見せて、お手本を示したりして、ルールを守るように促す役割があります。」


【登山中の役割3「集中しやすい環境をつくる」】

私「登山(学習)に集中しやすい環境を整えることも、大切な役割です。
 登山の途中で、Aさんがクワガタムシを見つけたとします。そのクワガタムシと遊んだり、他にムシがいないかと探し回ったりしたとしたら、登山に集中できなくなりますね。 そうすると、友達とどんどん離れていき、時間通りに山頂に行けなかったり、最悪リタイヤということになります。

 そうして場合、●ペース&リードが有効です。いきなり手を引っ張って登山に向かわせるのではなく、まずAさんのペースに合わせて一緒にクワガタと遊ぶのです。そして、Aさんがある程度満足したところで、「さあ、お昼までに山頂に着いて弁当を食べるんだったよね(行程の確認)。そろそろ行こうか。」と山頂へ向けてリードするといいのです。

 場合によっては、もっと楽しいディズニーランドへの道に行ってしまう場合もあります。そうすると、登山より楽しいでしょうから、登山は放棄ということになってしまいます。
 総合学習の時間、Aさんだけパソコンのゲームサイトに熱中していたことがありましたが、例えばそういう状態です。
 
 そうならないように、あらかじめそちらへの道を見えないように閉ざしておく必要があります。もちろん、行きそうになったら、「ディズニーランドに行きたいよ(パソコンゲームがしたいよ)。」と言っても、止める必要があります。

 登山中に、蚊がおそってくる場合もあります。これは危険というより、気になって集中できにくくなります。事前に虫除けスプレーをするとか、蚊を退治するとかの必要があります。
 実際、授業中、トンボが入ってきただけで集中できなくなる場合があります。そうした場合、トンボを出す、そもそも入れないようにすることで、Aさんが集中しやすい環境をつくるわけです


【登山中の役割4「認め・励ます・共感する」】

私「山登りですから、途中苦しくなってくる場合があります。「先生、疲れた。」とか「もう歩きたくない。」とか言う場合です。

 そうした場合、

「疲れたね。今、三合目まで歩いたんだよ。もう少し行くと、ベンチがあるから、そこで一緒に休もうか。」「腰を下ろして、水を飲もうか。」と言ったり、

「水筒だけ、重そうだから持ってあげようか。」と言ったりします。

 Aさんの場合、できるのに面倒だから人にさせる傾向が強いから、そう言うワガママを聞かないようにと言ってきましたが、本当に辛い場合は、「持ってあげる」こともありです。

「もう五合目まで来たよ。がんばったね。もう少しだよ。」
 こう言って、認め・励ますことも、大切な仕事です。

 あと、見晴らしのよいところにきたら、あるいは山頂に着いたら、一緒になって
「先生、すごい、海が見える。」
「本当だ。海が見えるね。すごいね。」
共感することも、大切な仕事です。


【登山中の役割5「現状をフィードバックする」】

Aさん「先生、あと山頂までどのくらい(距離・時間)で着くの。
 今、どこにいるの。何合目。
 休憩(山頂)までどのくらい。
 分かれ道があるけど、どっちに行けばいいの。
 道に迷ったみたいだけど、どっちに行けばいいの。」

 こんな質問(表情)が子供からよく出ます。
 つまり、自分の現状や先行き(見通し)について知りたいのです。正確な道筋について知りたいのです。そうでないと、不安なのです。

 そんなとき、「地図のこの辺りにいるよ。」「今8合目だよ。あと10分ぐらい歩けば、山頂だよ。」「あっちでは、山頂に行けないよ。こっちの道だよ。」…このように、子供が置かれている現状についてフィードバックします。

 そうすることで、山頂に着けるようにサポートすることも、指導員の仕事です。


【教師の仕事、指導員の仕事】

  しおり(学習計画)をつくり、先頭に立って全体をリードするのは、教師の仕事である。

 そのしおりに沿って、ガイド&母親のように、子供が無事・楽しく山頂まで行けるようにサポートすることが、指導員さんの仕事である。

 指導員さんの仕事は、ガイドの専門性と母親のようなあたたかさ・強さが要求される専門職であり、大切な仕事である。

 教職経験の全くない(市の景気対策として、本来事務職としての採用された)Bさんに、指導員さんの仕事がイメージできるように、学習活動を登山になぞらえて説明してみた。

※ 読者には、指導員さんはほとんどおられないと思うが、参考までに記事としてアップした。

【関連記事】あったかい家族日記 「家族の広場」

わが子が障害をもっていると知った衝撃! その1 610号

特別支援学級介助員として働き始めた妻

子育ての心構えとポイント

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◆キーワード:1 指導員・介助員の仕事  2 特別支援教育  3 登山

◆留意点・その他:

・私の勤務する市では、指導員と呼び、妻の勤務する市では、介助員と呼んでいる。簡単に言えば、メインの教師の仕事をサポートする仕事である。これでは、余りにおおざっぱなので、今回の話をしたわけである。

・指導員のBさんには、山や道、クワガタ、蚊、石、何合目かを示す標識、分かれ道…などのイラストを描きながら、約30分間、説明した。Bさんは、うなずきながら話を聞いていた。翌日聞いたら、「わかりやすかった。」と言っていた。


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qooo

仰る通り、サポートする(介助、補助)といっても、
どこまで、何をするのかというのは、
分かりづらかったりしますものねえ。
ファーザーさんのご説明は、とても分かりやすいと思いました!
by qooo (2009-11-01 09:10) 

ファーザー

>qoooさんへ
コメントありがとうございます

この説明をするために、どのように説明したらわかりやすいかいろいろ考え、2時間ほど使いました。

qoooさんにそういっていただけると、うれしいですね!


by ファーザー (2009-11-02 18:41) 

介助員をしています

反抗挑戦性障害をネット検索していて、こちらのブログをよませていただきました。

現在、介助員をしています。
今までいろいろあったようで、その子に初めてついたのが私です。
自傷行為などもあり、とても困っています。学校からの指示がほとんどなく、それでいて入れる教室に入れておいてください。とのことなので、その方向へもって行こうとすると当事者もパニックを起こすことがよくあります。
私は怒らずやさしく話を聞きながら導いていくをスタンスですが、パニックを起こし始めると大変になってしまいます。そのパニックの原因がどこかの部屋に入ることなので、どうしたらいいもか本当に困っています。一度学校に相談しましたが、外はダメですとのことでした。
また、担任からその子に話しかける事は一日に1回あるかないか。
私への指示も殆ど無くといった形です。

自分が嫌だと思うことがあれば、どんな小さいことでもパニックを起こし、自傷行為を続けること、そのパニックの最中は抱きしめることも全力で拒否し、とにかく校庭や人のいない所へ逃げ出すこと。

どのように対応をしていけばいいか、相談しても指示が無く困っています。
もしよければ何でもいいのでぜひぜひお答えいただければと思います。
by 介助員をしています (2012-10-27 17:44) 

ファーザー

>介助員さんへ
介助員さんに指示やこれまでの経過の説明もなく、まかせっぱなしとは、その学校の体制は一体どうなっているのでしょうね。これが本当なら正直あきれます。

私としても、これだけの情報ではどうアドバイスしてよいかわかりません。
まず、個別指導計画、教育支援計画を立てることが義務付けられていると思うのですが、担任にそれを立ててもらうことですね。そのうえで、その計画に基づき(短期・長期の見通しをもって)、介助員さんは動くのが基本です。(この時期にそれができておらず、介助員さんに丸投げ状態というのが全く不思議です。それとも、新しく入級したばかりなのでしょうか。)
あと、医療との連携は必須です。

とりあえず、参考書をいくつか薦めておきます。
①ADHDのペアレントトレーニング(明石書店)
②気になる行動から読み解く子ども支援ガイド(学苑社)
③高機能自閉症・アスペルガー症候群及びその周辺の子どもたち(同成社)
④ADHD及びその周辺の子どもたち(同成社)
⑤発達障害の子どもたち(講談社現代新書)

①、②、③をまず読まれるとよいと思います。
一人で悩むのではなく、管理職や担任などとよく相談されることを勧めます。がんばってください。
by ファーザー (2012-10-28 09:15) 

介助員をしています

前回は突然コメントさせていただいたにもかかわらず、早々にお返事を頂きどうもありがとうございました。
お教えいただいた書籍、ぜひ読まさせていただきたいと思います。
大事なことを書き忘れていたのですが、私が勤務しているのは特別支援学校ではなく地元の小学校の通常学級での出来事です。ですので、個別の指導計画や教育支援計画等がないようなのです。
by 介助員をしています (2012-10-30 01:17) 

ファーザー

>介助員さんへ
通常学級ということは、通常学級在籍ということでしょうか。本来は小学校の特別支援学級に在籍すべきところ、通常学級に在籍しているということでしょうかね。
 そういうグレーゾーン子どもの場合、教育支援計画の作成は義務づけられていませんが、個別の教育計画は作成することになっているはずです。(当県の場合はそうです。)
 義務づけられているかどうかにかかわらず、①子どもの実態 ②長期の目標(年度末まで)、短期の目標(学期末まで) ③目標を達成するための指導方法(指導する人、指導の場を含む) ④保護者の願い ⑤学級および学校全体で配慮すること ⑥医療機関等との連携 などを明確にする必要がありますね。
 介助員さんに丸投げするなど、もってのほかです。
 とわいえ、現実には少なからずある実態なのかもしれません。紹介した本を読まれると、対応策を考えるヒントがきっと得られると思います。がんばってください。
by ファーザー (2012-11-04 06:31) 

介助員をしています

ご丁寧にありがとうございます。
本は全部取り寄せて、今『高機能自閉症・アスペルガー症候群及びその周辺の子どもたち』を読ませて頂いているところです。
見ているお子さんと同じような行動があり、驚いています。
分かりやすく、詳しく書いてあるので助かっています。

今日、初めて他の先生よりこの学校は例年荒れていて、ここで過ごせればどこでもやっていけるといわれました。管理職の先生も今年赴任されたばかりの方たちとのことでした。
説明も何もないのが分かった気がします。

個別の教育指導計画がどうなっているのかぜひ知りたいと思います。

色々なお知恵を拝借させて頂き本当にありがとうございます。
上記を頼りに子ども第一でいい方向に向かうようにやっていけたらと思います。
また時間が有るときにブログ、拝見させて下さい。

お礼まで
by 介助員をしています (2012-11-07 16:07) 

ファーザー

追加
●『発達障害とその周辺の子どもたち』(尾崎洋一郎、同成社、1600円+税)もおすすめの本です。
by ファーザー (2013-04-22 06:04) 

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