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子育ての心構えとポイントー五つの原則ー [O4 特別支援教育]

◆リード:今年度最後の学級懇談で、私は『子育ての心構えとポイントー私が大切に思っている指導の原則からー』というテーマで、40分程お話した。特別支援学級を担任している私が大切にしている「五つの指導原則」がある。それは……。

2007.2.17       検索HP『家族の広場』へ 

      子育ての心構えとポイント

 2007年2月15日は、学級懇談であった。私は、特別支援学級で3名の子供を担任している。毎日顔を合わせて学校での子供の様子を話しているので、今回は「子育ての心構えとポイントー私が大切に思っている指導の原則からー」というテーマで、40分程お話することにした。

 参加者は特別支援学級に在籍しているAさん、Bさんのお母さん2名である。Cさんは、都合が悪く参加できなかった。

私「今日は、お忙しいところわざわざお越し下さり、ありがとうございます。いつも学校での子供の様子はお話ししてあるので、今回は『子育ての心構えとポイント』というテーマで、私が大切に思っている指導の原則から五つにしぼってお話ししたいと思います。」


【指導原則その1『我が子はできると心から信じ、そのように扱う』こと】
私「まず、一つ目に『我が子はできると心から信じ、そのように扱う』ことがあります。 「我が子には、難しい。とてもできっこない。無理に決まっている」とはじめからあきらめていては、指導が始まりません。
 Aさんは、初めて学校に来たとき、給食の牛乳もご飯もデザートも全然食べれませんでした。ご飯(お米)については、もう2年も食べていないということで、まったくあきらめていましたよね。

 私は、まず牛乳と肉は、お家でも食べているのだから、絶対できると思いました。お米も、大好きなお好み焼きにほんの少し混ぜたら知らずに食べ、じんましんができるということもなかったので、これもできるようになるはずだと、心から思いました。
 実際時間は1年以上かかりましたが、食べられるようになりましたね。

 まだ「とろみのあるものが食べられない」という偏食がありますが、昨日の給食でとろみがある酢豚の中の好物の肉だけは食べました(以前は肉もダメだった)。ということは、とろみのついた野菜も大丈夫なはずだと、すぐに「ニンジンも食べなさい。」と言ったら、食べました。私の中では、既にとろみも克服済みです。というのは、とろみも克服できると心から信じることができたからです。
 Bさんも、入学したばかりの4月は「果たして一字一字のひらがなが読めるか?」お母さんも私も分かりませんでしたよね。単語全体の形で読んでいるのではないかと。
 しかし、読めることがわかって、5月に初めて「い」という文字を書いたとき、私は「本当によかった!この子は、漢字も読んだり書いたりできるようになるな。」と、心から信じたのです。そして、そのようになりました。」

Bさんの母「その時点で漢字まで?」

私「ひらがなも漢字も、(おそらく)脳の使う部位は同じでしょう。もともとひらがなは漢字からできたのですから。」

私「我が子は心からできると信じると、子供にその思いが伝播するのです。ボクはできるのかもしれないと……。
 逆に、親ができることを信じていない。親が「我が子はできない」と思っていると、大変です。親の認識を変えることから、まず始めなければなりません。
 
 子供も同じで、「2年生の算数がわからない。自分は算数はできない。」と言っている子供に、1年生までレベルと下げて10までの足し算にチャレンジさせようとしても、はじめは「ボクは算数ができない!」と言って、取り組むこと自体にすでに抵抗が生じてしまうのです。(実話)

 できると信じて指導(学習)するのと、どうせできないと思って指導(学習)するのとでは、天と地の違いがあるのです。
 
 そもそも、できると信じるからこそ指導が始まり、学習がスタートするのです。ここから東京に向けて歩いてスタートするとすれば、方向さえ間違えなければ、スタートした以上いつかは着くわけですね。ところが、スタートしなければ、5年たっても10年たっても絶対に東京には着きません。

【指導原則その2『決してあきらめないで、継続する』こと】
 私が大切にしている、二番目に大切な指導の原則として、『決してあきらめないで、継続する』ことがあります。
 Aさんの偏食の例で話しますと、米粒10粒程度しか食べない状況が1年近くも続きましたね。その時は、いい加減あきらめようかと、正直思いました。
 でも、お母さんの「食べられるものがなくて、レストランへも行けない」という言葉、「日本社会でお米が食べられないというのは、大変なハンデ」という認識、ここで投げたらおしまい。この子の一生がかかっているという思い。これらもあって、やり続けましたよね。おかげで、今はカレーライスも、普通のごはんも普通の量食べられるようになりました。
 あきらめないで継続すること。これは、まず子供よりも親や教師にこそ望まれる構えなんです。子供は、まだまだ子供であってある意味今が心地よければいいと思っているのです。こちらが、お米を食べさせることをあきらめれば、子供は「ばんざ~い! これで嫌いなお米を食べなくていい!」と喜ぶだけですよ。

 しかし、お米や野菜を食べることの重要性を知っている親や教師は、決して投げてはいけない。あきらめないで続けていれば、この例のように、ある時ポンとできるようになる可能性があるのです。でも、投げたらその時点でおしまいです。

 この間、レストラン体験の学習で、Aさんは、「ビフテキカレー」を注文して、「おいしい。おいしい。」と言いながら、満足そうに食べていました。そんな体験もできなかったわけです。
 算数やひらがな、漢字の指導も同じですね。5枚、6枚程度プリントをやっても、やらない場合とあまりかわりませんね。10枚、20枚とやって初めて身についてきます。

【指導原則その3『指導法を工夫する』こと】
 私が大切にしている、三番目に大切な指導の原則として、『指導法を工夫する』ことがあります。
 昨日の午後、特別支援教育の研修会がありました。私はそれに参加してきたのですが、講師の県の指導主事の方が、講演の最後にこう言われていました。

指導主事「特別支援を要する子供たちは、通常学級において『困った子』だと思われがちである。通常の指導が通じず「できない」、「わからない」。そればかりか騒ぐ暴れる……。そうではない。特別な支援を要する『困っている子』がいるのだ!」と。

 その通りなんです。通常の指導で「できない」、「わからない」だから、「この子はダメ」「この子には無理」ではなくて、特別な指導法の工夫が要るということなんです。

 私は教えていて、子供が反発したり、「わからない!」と言って抵抗したりした場合、「その指導ではいけないよ。」「指導法を工夫しなければいけない。」というサインだと基本的に受けて止めています。あるいは、課題が高すぎだと受け止めています。
 偏食の例で言いますと、「好物のお好み焼きに混ぜて食べさせる。」「牛乳にミロを入れる。」「食パンに野菜を挟む」「野菜が食べられたら、デザートを食べさせる(専門的にはこれはプレマックの原理の応用である)」……これらはすべて一つの指導法の工夫です。

 ただし、子供の反発といっても、子供の反発にかかわらず、越えさせるべきハードルがあるときもあります。
 例えば、Aさんが初めてお米を一粒食べると約束した日。Aさんは「学校へ行きたくない」と言っていましたよね。でも、越えさせなければならない。Bさんは「掃除をしたくない。」と言って、がんとして動かない時がありました。でも、やらせなければならない。
 その反発・抵抗は、ただ怠けやしたくないというわがままな気持ちだけからかどうかは見極める必要があります。

【指導原則その4『段階を追って、レベルアップしていく』こと。スモールステップで!】 

 これは、指導の原則3と共通している部分が多いのですが、私が大切にしている、四番目に大切な指導の原則として、『段階を追って、レベルアップしていく』ことがあります。
 
 通常指導においても、段階を追ってレベルアップしていくことが、もちろん求められます。そして、特別支援を要する子供の場合は、さらに細かい段階が必要なんです。通常の子供が3段ぐらいで進むところを、さらに細かく10段ぐらいにして進む感じですね。

 Aさんの偏食指導の例で言えば、野菜のうち絶対食べられないと思っているもの・強く食べられないと思っているもの・できれば食べたくないと思っているもののうち、そんなに抵抗感の高くないものを、まずターゲットにして指導していくということですね。
 米一粒から10粒食べる→のり巻きにまいて食べる→ふりかけをかけて食べる→ふりかけなしで食べる……これもそうです。(ここでは、絵の指導なども例としてあげたのだが、割愛する)

 これをしないで、通常のステップで指導しようとすると、子供にとってハードルが高く、結果として無理強いすることになってしまい、子供の反発を買います。そして、結局親子とも挫折することになるのです。


【指導原則その5『家庭と学校が連携して取り組む』こと。こうして効果は倍増する!】  

 これは、通常の学級においても同じなのですが、五番目に大切な指導の原則として、『家庭と学校が連携して取り組む』ことがあります。

 Aさんの偏食指導の例で言うと、学校でも家でも取り組むことで、初めて成功したと思うのですね。夏休み中もがんばって取り組まれていましたよね。それがあって、今があると思うのです。
 逆に学校で指導しても、家で指導しなければ効果は半減するし、学校で指導しても家で「あんなのいいのよ。」となると、効果はゼロ。元の木阿弥になります。
 (掃除などの例は割愛)

 そういう意味では、「1年生の夏休みが勝負です」と言ってきましたね。1年生から、「夏休みも勉強するものだ」と思わせることが大切だと。1年生の夏休みに、勉強もしっかりするように躾ければ、9年間(中学卒業まで)そうなる。1年生の夏休みが勝負だと。

 今、家庭で漢字(学校で既に習ったもの)や日記を毎日書いていますね。これは本当に大きな力になっています。
  

【『あきらめ』も大切!】 
 「我が子はできると信じる」「決してあきらめない」と矛盾するようですが、「あきらめ」もまた大切です。
 親や教師の願望だけで、全く可能性のないことを子供に強いるのは、親も教師も子供も疲弊します。そればかりか時間と労力の無駄です。

 子供の現実をよく見れば、今の時点で指導しなければいけないことはたくさん見えてくるんです。その可能性のあるところにこそ、時間と労力を注ぐべきです。
 
 今やるべきことをきちんきちんと愚直にやり続けること。これが大切だと思います。

 続く

【関連記事】あったかい家族日記「子供は変わる! ーすさまじい偏食を治す!パート3ー」

「すさまじい偏食を治す!」  「すさまじい偏食を治す!パート2」

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◆キーワード:1 子育ての指導の原則  2 親と子の勉強会  3 学級懇談

◆留意点・その他:
・Aさんの偏食指導については、以前にこのブログで紹介した。このブログの読者にとっては、分かり易いと思い、例として偏食指導を挙げている。実際は、日記、漢字、掃除、算数指導など、様々な例を挙げて話している。

・Aさんも、Bさんも、すばらしく伸びた。二人とも1年生の1学期中に「果たして名前が書けるようになるか?!」という段階であったのである。算数も同様である。
 現在は、それぞれの学年の教科書を音読できているし、漢字も含め、二人とも読んだり書いたりできる。
 算数については、ほぼその学年の内容をクリアーできている。これらは、すべてこの5つの原則に従って指導してきたからである。
 例えば、かけ算九九ならば、私はできると信じ、Aさんのお母さんにかけ算九九CDを渡して、2年生の夏休みのうちから家で聞くようにお願いしてきた。(通常2年生2学期の指導内容である。)その結果、9月はじめの段階で、Aさんはかけ算九九をほぼ覚えていたのである。


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Shun

興味深く拝見しました。
教え方、接し方に配慮が必要なお子さんたちとの関わりから導かれた心構えとポイントですが、それだけに子どもを教育する際の本質的な要点にもなっているように思います。
私自身が心がけていることとも重なる部分が多く、わが意を強くしました。
by Shun (2007-02-19 00:37) 

泉河潤一

>Shunさんへ
紹介した「子育ての心構えとポイントー五つの原則ー」ですが、二つ目から五つ目までは、原則だけ眺めれば、取り立てて新味もなく、当たり前のことだと思われるでしょう。

しかし、その当たり前のことが実際の行動レベルでしっかりできるかどうか、それこそ「決してあきらめないで継続する」こと一つをとっても、教育(育児)効果に大きな違いとなって表れてくるのだと思います。

寝る前の絵本読み、父と子塾、最近では暗唱。すべてがこの五つの原則(暗唱は学校で勧められたわけではありませんが)によっています。

一つ目の「『我が子はできると心から信じ、そのように扱う』こと」については、当たり前にはなっていないと思います。
 特別支援教育に携わるものとして、親も教師もそして子どもも、はじめからあるいははじめてすぐに「できない」とあまりにもあきらめている(指導=学習を放棄している)ケースが多いような気がして、一番目に大切な原則としてあげています。

ここがなければ、指導(学習)がスタートしないという意味でも、一番目に大切な原則として挙げています。
by 泉河潤一 (2007-02-25 18:34) 

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